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「今、卒業の時!」楽曲制作裏話


 「今、卒業の時!」は、2014.11.29に作曲に着手した曲で勤務校の卒業生のために贈った1曲です。

この曲は、幸せなことに出版の機会を頂戴し、その後も、他の学校での取組の報告をきいています。

 さて、「教育音楽」2016年10月号付録楽譜に寄稿させていただいた文では書ききれなかったいくつものことがありますので、こちらに記しておきます。歌唱の指導方法については、いくつもあるでしょうから、ぜひご教授いただけましたら幸いです。

♦前奏

・前奏は、曲中の歌と関連がある。(最初~2小節目=サビの『今、卒業の・・・』旋律、7,8小節目=『全部胸に刻んで』)。曲冒頭の指示にもあるように、前奏を聴きながら目をつぶって回想し、歌いだせるように。

♦1番Aメロ

・旋律の音の上下の動きに乏しく、主張せず控えめ。つまり、情景描写の役割。

・15、16小節目の伴奏。手の交差の左手の音符。歌との掛け合いとなっているが、これは、6年間の1コマ1コマを写真でとったようなシャッターの音。なお、この音型は、31小節目の右手にもこっそり登場。(ただし、サビは少し早くなるだろうから、16分音符ではなく、8分音符)弾きづらい場合は、カットでもよい。

♦1番Bメロ

・サビに向かって音楽が動き出す。

・24小節目の3連符は、あふれる感情。8分音符では、伝えられないこみあげてくるもの。

・「全部(全部)胸に刻んで」全部という言葉をソプラノ、アルトで追いかけることで、強調。

・伴奏も27小節目リズムを刻んでたたみかけ、サビに向かう。

♦1番サビ

・28小節目「卒業」、「そ」から「つ」の7度の跳躍力いっぱい、思いいっぱいに。

・42小節目に向かって盛り上げために39小節目mpからエネルギーをためる。

♦間奏

・Bメロ「仲間と・・・」の一部を使った。サビで盛り上げたテンションを2番歌い出しまでに戻す。

♦2番Aメロ

・2番になるとオブリガートや副旋律で色を付けたす。u母音のオブリガートは、差し込む光を想像してつけた。春夏秋冬それぞれの季節に降り注ぐ光。僕たちをどんな時も照らした光。このオブリガートの役割を子供達にきいたところ「風」や「思い出が走馬灯」をイメージしたという回答も得られた。とにかく、情景を膨らませてくれることを期待してオブリガートをつけた。

♦2番Bメロ → サビ

・一般的な転調の方法では、2番のサビが終わってから・・・というのが定石だが、時間の関係や少しインパクトのある転調をと考えて51小節目にあまり見ない手法の転調を考えた。とにかく、この曲を印象づけるのがこの部分でしょう。初めて聴くと、おやっ思われるかもしれないが、何度も聴いていると結構なじむはずである。転調は、ポップスでも多用されている。この楽曲を通して、転調のよさや効果についても、学習できるだろう。

・2回目のサビはリズムが違う。『「今」の「い」』は、四分音符の方がエネルギーが入る。しかも歌は、ユニゾン、伴奏も動きをとめて、アカペラ(といっても伴奏の和音が残っているが)のような効果も期待した。

・57小節からの「無限遠の空」。しばしば、空は「未来」や「可能性」のたとえとなることから、未来につなげ、というイメージをもって。

・60小節目の伴奏の和音。Gm(短和音)やD Aug(増和音)など後ろ向きで不安になる和音を入れた。住み慣れた場所からの卒業、いろんな不安もあることだろう!しかし、この不安、暗闇は、62小節目~晴れて、明るい空に!不安を吹き飛ばし、「今、卒業するんだ!」という決意を表した。

・65小節目「!」まで歌に思いをこめて。伴奏にも一番下のシ♭のオクターブの音を使い、「!」をつけた。

♦後奏

・四分音符の重厚な和音が続く。鐘が鳴ってハトが飛び立つイメージ。アクセントにテヌートがついているところは、poco rit.みたいに。少しためて。

・借用和音を使い、一時的に転調したような感じになる。遠い未来に向かうイメージ。「安心」の主調(B dur)から「未来」の調(Ges dur)へ。

・66小節目の4分の3拍子は、拍をおさめるのに、どうにも書きようがなかった。拍子感にとらわれず、曲の最後の2つの和音は、特にたっぷりと。

・最後の和音は、堂々と余韻たっぷりと。


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