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「規準」と「基準」


 音楽の教科書の教芸のホームページをふと読んでいましたら、熱田庫康先生の解説が大変わかりやすく載っていましたので引用します。特に、「基準」と「規準」について、学習のプロセスを登山に例え、解説して下さっています。

引用ページ(教育芸術社)

[教科書・指導書>学習指導要領>評価についての資料]

https://www.kyogei.co.jp/textbook/compare/evaluation/evaluation_qa.html

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「富士山の山頂まで登る」という目標があったとすると,「ここまで登れば合格」というポイント,これは努力すれば実現できるもので,かつ達成感を味わえるポイントですが,これを「規準」ととらえます。それを仮に富士山の5合目とするならば,5合目付近に来た子どもは「おおむね満足=Aを含むB」と考えます。 それに対し,教師が先頭を歩き,トップの子どもが山頂に着いたときに振り返って,「7合目以上まで来た子がA」とか「5合目以上まで来た子がB」「そこまで行かなかった子がC」などと,ABCという境目を示す尺度が「基準」だと言えます。 さて,ここからがたいへん重要です。これからの教師は,いかに多くの子どもたちを5合目付近(「おおむね満足」の地点)まで達するようにさせるか,を第一に考える必要があります。繰り返しますが「山頂にたどり着く」ということが「規準」になるのではなく,だれもが努力すれば達成することのできる内容が「規準」として設定されるべきなのです。 その場合「おおむね満足」の地点である5合目にたどり着くまでの道のりには子どもによってさまざまなものがあります。さらにはたどり着いたその先の道のりにも,さまざまなものがあります。5合目まで来たら,高山植物の観察をしてもいいし,景色をスケッチしてもいい。「ここまで登って来た方法を応用して,いろいろな楽しみ方があるよ」と投げかけてもよいでしょう。そういったプラスαの活動の達成に至った子にはAという評価を与えることができるでしょう。そしてそのAの在り方にはさまざまなものが考えられるのです。 子どもたちはさまざまな能力や可能性をもっています。最初から「B=5合目」「A=7合目」という「基準(尺度)」を決めて指導すると,指導の幅も多様性もかなり制限され,子どもの多様性に対応することができなくなりますし,評価もたいへん窮屈で冷たいものになってしまいます。 それと同時に,教師の指導法にも変化が求められるかもしれません。 山頂や別の山から子どもたちを励まし,「7合目までは何人だ,5合目まで登れていないのは何人だ」とするのではなく,教師自身がふもとと5合目の間を往復しながら,まだ5合目に行き着かない子どもを支援して,一人でも多くの子どもがまず5合目まで到達できるようにする。そのことに全力を傾けるためにも評価「規準」の存在が大切になってきます。 音楽科にとってはこの「規準」という考え方はたいへんふさわしいものと思います。これに対して,子どもの能力を数値に置き換えたり,限定した目標だけに向かわせてしまう「基準」は,特に音楽科においては設定すべきではないと考えます。 とはいえ,特に中学校においては,内申点の問題や他教科との整合性などから,「基準」的なものを設定するのもやむを得ないところがあるかと思います。ただ,いずれにしても,今まさに音楽科の理念を改めて問い直す機会であるとすれば,「規準」の意味を十分理解し,授業の中で子どもたちと音楽をどう楽しんで,どう発展させていくかを考えることがより重要であろうと言えます。


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