教職大学院に1年間通ってみた話
- 3 日前
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私事になりますが、令和7年度に部分休業(半分勤務、半分休業)を申請して教職大学院に修学する機会をいただいていました。
近年、育休の対象が小3まで拡大になる等、休業制度の拡充は歓迎するところですが、制度が整備されても取得する人いなければ何ら意味をもちません。取得率が低ければ後に続く人は出づらいですし、取得者の裏で顕在化する教員不足の深刻度も伝わりません。本情報は、稀な事例で役立つかはわかりませんが、私の経験を発信させていただくものです。
1,修学の動機
近年、「学び足し」という概念や終身雇用制度の是非を問う欧米的な思想を耳にします。特に、欧米や日本の高等教育機関では、一定期間勤務地を離れる研修や自己啓発、スキルアップのために休暇を取得する「サバティカル制度」の取得が進んでいるそうです。
今回私が修学休業を取得した動機の1つには、音楽科教育の幅を広げたいといった視点に加えて、一度アカデミックな機関で論文やら学会やらに触れてみたいと思ったことがきっかけでした。調べていくと、休業制度を利用する人が身近に全くいなかったため、ますます人柱となって取得してみようという興味が湧いたこともきっかけになりました。また、将来のキャリア形成を考えた時に、修士の学位を取得しておきたいなと思ったことも動機の1つです。
他の方も様々にあるようでしたが、私の音楽学科において、現職院生と学卒院生の割合は、1:7でした。学科によっても違いがあり、学校組織、総合プログラムといった学科では割と現職院生率が高かった(要は派遣教員プログラムになっている)ようでした。
もし興味があって、では、どの年次タイミングでいくかもあろうかと思います。多くは、10年~20年次の方が多かったですが、中には教職5年目という方もいらっしゃいました。
2,修学等にかかる休業制度のまとめ(埼玉県の場合)
休業制度 | 期間 | 給与支給 | 学位 | 主な所属先 |
A 長期研修
| 1年間 | 有 | × | ・任意の国公私大学や大学院 ・県立総合教育センター ・その他、指定される民間企業等 |
B 大学院派遣研修(大学院設置基準第14条規定) | 1~2年 | 有 | △ | ・文教大学大学院 ・女子栄養大学大学院 |
C 教職大学院派遣研修 | 2年 | 有 | 〇 | ・上越教育大学大学院 ・兵庫教育大学大学院 ・鳴門教育大学大学院 |
D 大学院等修学全休業 | 1~2年 | 無 | △ | ・任意の大学院 |
E 大学院等修学部分休業 | 1~2年 | 減額 | △ | ・任意の大学院 |
F 自己啓発休業 | 2年 (海外は3年) | 無 | △ | ・任意の大学院や海外留学 ・JAICAや国際貢献活動も〇 |
《備考》
*A~Cは、各県での勤続勤務の誓約あり。(転退職の場合、咎められた人がいたとか)
*Eは、大学院等修学部分休業は、週の勤務時間(37.5時間)の半分(18.75時間)以上の時間の勤務が必須。勤務時間半分未満となる場合は、Dの全休業取得が必要。私は、入試までに何度か院の説明会に参加し、本当に半分の勤務で修学が可能なのか、シュミレーションをしてもらいました。時間割の並びが偶然よかったことと、県の研修プログラムで共通8単位4科目を先に単位履修を済ませられたため、私は部分休業1年で済んでいます(最も1年限定で通おう、2年はないなと思っていました)が、事前の単位履修もなく、時間割も厳しい場合は部分休業期間が2年となるでしょう。なお、院によって、設定している修学期間はまちまちで1~4年の幅で選択、基本は2年としているところが多いようです。
*Fは、取得後、一定期間の退職不可。
3,部分休業取得での待遇
私の取得した修学部分休業は欠勤時間数だけ給料が引かれていくシステムでした。取得してみたいと考えても、現実的な話も大切かと思います。下表は、月額給与(満額)からの給与割合(上段)と欠勤時間数(下段)です。例えば、4月は、38.75時間の欠勤した結果、満額から66%の給与でした。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 |
満額の66% | 満額の39% | 満額の46% | 満額の60% |
-38.75時間 | -70.25時間 | -62時間 | -54.25時間 |
8・9月は、大学の授業がなかったため、部分休業は一時的に取り消し、通常の勤務時間をこなし、給与は満額支給でした。10月以降についても、4~6月同様です。
4,どんな生活を送っていたのか。
下表の通り、勤務と修学が半々ですが、今は、さすが…オンライン授業やオンデマンド授業も多くあり、働きながら学びたい方にとっては、よい環境が構築されていると思います。

水曜日など、大学院の授業と授業の時間が空く時は、図書館にこもって、課題をこなしたり、論文を読んだり、仕事をしたりしていました。大学の図書館にいると、全国の研究論文にアクセスでき、読むことができ、参考になる論文にいっぱい出会えました。
金曜日は、学外の研究会や先進校の視察に行っていました。主に関東近郊の研修会や学校訪問、四国や中国地方など遠方にも計15カ所に視察に行けて、これが一番よかったことでした。
通いの院授業日は、夜の授業開始18:20に間に合うように、退勤後、急いで修学していました。帰宅が22:00近くになったり、土日の研究会・論文発表会も年に5日程あったりしましたが、土日は基本的にフリーでした。
5,勤務有無/有給無給/学位必要不必要で選ぶ
■勤務有/勤務無
完全に休むか、仕事しながら修学するかは、一長一短。勤務無の場合、修学に専念でき、現場といったん距離を置いて見えるものもあるかもしれません。仕事をしながらの修学は過酷ですが、いつでも学校で研究・検証できる点、現場感覚を維持し続けられるのは利点だと感じます。
■有給/無給
長期研修と指定大学院派遣研修は給与が出ます。代替の臨採も補充があり、勤務校の負担は少ないと思われます。
■学位必要/不必要
公立学校職では、学位や1種→専修と免許状の上進自体には、特段利点はないように思いますが、高等教育機関や学術研究等の関わりたい場合は、修士/博士の学位があった方が視野は広がると思います。
■永続勤務宣誓してよいか否か
派遣教員の条件に、「研修後、本県への継続勤務宣誓」なるものがあります。これがどのくらいの期間において「拘束力・法的根拠」があるのか、は私には分かりません…が、すぐに転退職を視野に入れている場合、派遣教員(いわゆる有給のコース)は、向かないと言えます。
6、修学から取得期間終了までのスケジュール
(1)派遣による休業(自治体の試験のある場合)
私は、この休業制度を利用していないため、詳細は分かりませんので、ここからは伝聞になります。
まず、4月の上旬に勤務校の所属長を通してエントリーします。次に5月以降、教育委員会との面談や小論文による試験があるようです。この試験は、市と県と何回かあるようです。面談や小論文では、教育時事を踏まえて、研修によって得た知見をどう勤務で活かしたいのか、何を研究したいのか、といった視点について、つつかれることが多いようです。
あらかじめ、全県で派遣者は●名・教科や各コースそれぞれ●名と、偏りないように人数の調整がされているとのことです。よって、その年々で同一教科・コースを希望する人が重複する場合は、倍率も上がるでしょう。はれて、派遣教員の試験に合格した場合でも、院の試験を一応受けるようです。派遣期間は、1~2年なようです。
(2)修学部分休業(自治体の試験のない場合)
私はこちらの歩みでした。
令和6年夏季 | 県教育委員会「履修登録プログラム」(東京学芸大学)にて、4科目を履修(夏休みオンライン3日間×4科目=12日) |
令和6年9月 | 院試エントリー |
令和6年10月 | 院入試 *自治体の試験はないため、直で院試、一発勝負でした。内容は、教育時事と教科の専門記述論文、音楽科でしたので実技試験(共通教材の弾き歌いと主科の発表等) |
令和6年11月 | 合格発表 |
令和6年12月 | 部分休業取得申請(仮)を提出 *この段階では、当然大学院のスケジュールは未定なので前年度ベースの情報(仮)で出します。部分休業取得を目指す場合は、半分の勤務はマストなので注意が必要です。(正式)は分かり次第差し替えます。 |
令和7年3月 | 部分休業取得申請(決定版)を提出 |
令和7年4月 | 部分休業取得開始 *4月の大学院の授業開始は、4月15日くらいからでしたので、それまでは年休で対応しました。 |
令和7年7月 | 部分休業「徐期間」の申請 *大学院の授業がなくなる夏休みなどは徐期間として申請すると給与全額が支給されます。 |
令和7年9月 | 部分休業取得申請(変更届)を提出 *ここで時間割が変更になったため、申請の変更手続き。 |
令和7年10月 | 部分休業取得再開=後期授業開始 |
令和8年2月末 | 部分休業取得終了 |
最後に、日々ついつい忙しさのあまり、短期的な視野で物事を見てしまったり、惰性的に勤務してしまったりしがちでありますが、立ち止まって教職を省察みたり、中・長期的な視野でキャリア形成を見つめてみたりすることも修学を経て大切かなと感じました。

